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での経験だけで旅行を捉え、今までと同じ発想で旅行業に取り組んでもビジネスとしての成功のチャンスはほとんどないようである。かつて、旅行業が成長する中で旅行関連産業として土産品業、添乗員派遣業、旅行専門学校業、英会話スクール業、雑誌・出版業、CRS等の情報関連業など多くの産業が派生した。旅行業自体もインハウスエージェント、メディア販売、地上手配業、格安航空券業等さまざまな形態で発展してきた。若者に支持される旅行業界として、そのエネルギー溢れる活力や情報化の流れに沿って、これからは既成観念にとらわれない新しい発想で旅行業を捉えるべきである。今、折しもニュービジネスやベンチャービジネスに対する論議が盛んに行われるようになっているが、旅行業も時代をそのまま反映する新しいビジネスとして、正当な評価を受けられるよう、小規模旅行業者による創意・工夫が期待される。

 

知的産業への転換

知的サービスシステムの登録と保護を
旅行業界は実務の経験には熱心であるが、やはり勉強が足りない。旅行業界に就く者にとって必須の国家試験である「一般旅行業務取扱主任者」の資格も取れないでいる者があまりに多く、取得者もその後の勉強を怠っていて平気である。激しく変動する世の中の動きをそのまま反映する仕事でありながら、適応できるだけの勉強ができていない。「マーケティング」、「マネジメント」、「ホスピタリティ」、「コミュニケーション」、「コンサルタント」等についての前向きに学習し、従業者が常に自分白身の人間性向上や潜在能力の開発に努力する習慣が定着することが望まれる。新しい旅行業界には知性が求められているのである。
旅行においては、物の生産ではなく、顧客に対する「知的なサービスの生産」が可能である。運送機関や宿泊機関は、主としてハード面を充実させることで顧客満足を追求するが、旅行業者は、運送業者から運送手段、宿泊業者から宿泊施設の提供を受けて、これをベースに、蓄積した旅行サービスのノウハウ等ソフトな価値を付加して旅行を商品化することから、その競争において他との差別化が難しく、自分たちが苦労して独自に開発した付加価値であっても、付加価値に対する権利や保護は全く保証されていない。このことが旅行業の発展の大きな障害となっているのである。商品化して発表すればすぐに他杜に模倣され、単純な価格競争に陥ってしまうという悪循環である。独自に開発された優れた内容のサービスソフトやシステムは保護され、零細業者であろうと大手業者であろうと、自由で公正な競争ができる環境を整えることで、旅行者への「より優れたサービスの提供」が行われなければならない。旅行業者は、顧客満足が得られるよう、知恵と工夫で、常に新しい付加価値や魅力を創出し、正当な競争が確保される環境を整備することが大切である。新しい独自に開発された優れたノウハウは、しかるべき機関に登録され、むやみに模倣や低価格競争に巻き込まれることがないよう保護されるべきである。旅行業界の適正な発展を促進するためには、開発者の著作権が認められ、登録された企画内容は無断で使用できないようにする制度の創設がどうしても必要である。
地方自治の強化や地域活性化が叫ばれ、高齢者社会が急速に進展することが明確である時代の流れを敏感に読み取り、「時代に適合したシステム」を開発し、成功しつつある小規模旅行業者がある。
旅行業者M社は零細な旅行業者であるが、日頃から旅行者へのオーバーサービスよる「生産性の低い多忙さ」を何とかしなければならない、と考えていた。また、零細な旅行業者が生き残るためには「独自のサービスシステム」を開発しなければならないと考えて

 

 

 

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